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日本サルトル学会/脱構築研究会 共同ワークショップ「サルトル/デリダ」

次回の第34回研究例会は、脱構築研究会との共同で開催されます。

日本サルトル学会/脱構築研究会 共同ワークショップ「サルトル/デリダ」
日時:2014年12月6日(土)13 : 00-18 : 00
場所:立教大学池袋キャンパス 5501教室
主催:日本サルトル学会、脱構築研究会、立教大学文学部フランス文学専修
入場無料・事前予約不要


13 : 00-14 :30
第1部 特別講演 フランソワ・ヌーデルマンFrancois Noudelmann(パリ第8大学教授)
« Sartre et Derrida entre chien et chat. Pensées de l'animal »
司会:澤田直(立教大学)Moderateur: Nao Sawada (Université Rikkyo)
フランス語使用・通訳有り

15:00-17 :00
第2部 サルトル×デリダ
西山雄二(首都大学東京)「ポスト実存主義者としてのジャック・デリダ」
北見秀司(津田塾大学)「ポスト脱構築的なものとしてのサルトル弁証法」
藤本一勇(早稲田大学)「デリダの「他者」はいかにして「複数的」か?」
澤田 直(立教大学)「哲学と文学の分有:サルトルとデリダの文学論」
17 :15 -18 :00
第3部 全体討論「サルトルとデリダ」

18:30 懇親会


以下に要旨を掲載しておきます。


「ポスト実存主義者としてのジャック・デリダ」
西山雄二(首都大学東京)

 今年刊行された、Edward Baring, The Young Derrida and French Philosophy, 1945–1968 (Cambridge U.P., 2014)は、デリダ・アーカイヴの資料群を調べ上げ、若きデリダがいかに自己形成したのかをテクストの変遷とパリの知識社会の分析から描き出した労作である。デリダは構造主義における現前性の要素を批判し、「ポスト構造主義」を切り開いたとされる。だが、アルジェリアの高校時代から1952年に高等師範学校に入学するまで、若きデリダはサルトルやヴェイユの思想、エチエンヌ・ボルヌのキリスト教実存主義から強い知的刺激を受けている。Baringは、少なくとも1964年に高等師範学校の講師になるまで、デリダは「ポスト実存主義者」と呼称されるような立場にいたと主張する。Baringの著作を紹介する形で、若きデリダと実存主義の関係について発表をおこなう。


「ポスト脱構築的なものとしてのサルトル弁証法」
北見秀司

 本発表では、まず、『存在と無』が「超現象的なもの les transphénoménaux 」すなわち「現れないもの」の存在論であり、そこで展開される他者論がデリダの言う「現前性の形而上学」を超えていること、したがってサルトル哲学がポスト脱構築的なものであることを示したい。
 ついで、サルトルとデリダのマルクス解釈における相違を指摘したい。共産主義社会は「透明かつ単純」になるというマルクスの発言をもって、マルクスの理論は「脱構築以前 prédéconstructif 」にとどまるとデリダは断ずるが、サルトル弁証法は、この共産主義社会においても他者の他者性・意識の絶対的複数性を保持する理論を提供していることを論じたい。ここから明らかになるのは、現前野を超える他者との関係がどのような場合、抑圧的になるか、またいかなる関係において万人の生と自由を肯定しうるものとなりうるか、ということである。これは、「現前性の形而上学」の脱構築の後に来る、「来たるべき民主主義」のための理論的作業であると見なしうる。サルトルの非人間中心主義的疎外論と弁証法は、今なお猛威を振るい続ける新自由主義の自由観に対抗する上で、重要な復権すべき思想であると思われる。


サルトルとデリダの間――他者の複数性
La pluralité de l’autre ― entre Sartre et Derrida
藤本一勇

 デリダは伝統的な「自己」の哲学に対して「他者」の哲学を展開したとよく言われる。個々人であれ集団であれ、自己の論理に閉塞し、他者を抑圧・排除する体制・システムの暴力構造を暴き、他者の声=痕跡を拾い上げ、他者への歓待によってシステムの自閉を防ぐのだ、と。それが「差異の政治」と呼ばれることもある。しかしそのとき問題になっている「他者」とは、「他性」とはいったい何なのか。体制から排除される他者もあれば、むしろ体制を保持し強化する他者もある(ラカンやアルチュセールが論じるような大文字の《他者》、大他者)。自己や自律に対置された他者や他律は「疎外」の別名ではないのか。他者や他性は根源的に複数的である。では他性の複数性のなかで、どのようにして抑圧的・暴力的な他者とそうでない他者とを区別するのか。開放的な他性と抑圧的な他性の境界線はどこにあるのか。サルトルは『弁証法的理性批判』でこの問題を論じた。はたしてデリダはこの他者の複数性と他者内部の多様な境界線の問いにどこまで答えられているのか。そしてサルトルは? サルトルとデリダにおける他者の複数性の問題を比較検討し、自己の反射装置ではない他者論の可能性を探ってみたい。


文学と哲学の分有 デリダとサルトルの文学論
Partage de la littérature et de la philosophie : Derrida contresigne Sartre
澤田直

 デリダとサルトルが分有する領域は多岐にわたるが、本発表では、二人の哲学者にとっての文学の位置を中心に考察してみたい。デリダが若い頃から文学に強い関心を持っていたことは本人の証言からも明らかだし、作家でもあるサルトルにおいて文学が若き日から中心的な関心事であったことは言うまでもない。だとすれば、彼らにとって哲学と文学との関係はどのようなものであったのだろうか。キルケゴール・ニーチェ以降、二つの領域はクロスオーバーすることが頻繁になったとはいえ、プラトンを思い起こすまでもなく、哲学と文学は長らく相容れぬものとされてきた。哲学者が文学について語ることの意味は何か? 自伝的なものという問題構成も重要ではあるが、本発表では、評論を中心に考察してみたい。デリダが論じた作家たちが、サルトルが取り上げたものと重なっているのは、果たして単なる偶然だろうか。マラルメ、ボードレール、カフカ、ポンジュ、フローベール、ジュネ、ブランショといった両者によって論じられた詩人、作家が提起する問題を糸口に、両哲学者のアプローチ追いながら、文学と哲学の分有について論じることにしたい。



発表者略歴

西山雄二(Yuji Nishiyama)
首都大学東京・准教授。専門はフランス思想。1971年生まれ。一橋大学言語社会研究科博士課程修了(学術博士)。著書に、『カタストロフィと人文学』(編著、勁草書房、2014年)、『人文学と制度』(編著、未來社、2013年)、『哲学への権利』(勁草書房、2011年)、『哲学と大学』(編著、未來社、2009年)、『異議申し立てとしての文学――モーリス・ブランショにおける孤独、友愛、共同性』(御茶の水書房、2007年)、ほか。訳書に、ジャック・デリダ『獣と主権者 第1巻』(白水社)、『哲学への権利 第1巻』(みすず書房)、『条件なき大学』(月曜社)、『名を救う』(未來社)、ほか。

北見秀司 (Shuji Kitami)
津田塾大学国際関係学科教授。専攻:哲学・社会思想史。1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科仏語仏文学専門課程博士課程、単位取得の上、満期退学。パリ第10大学(ナンテール)哲学科博士課程修了。主な著書・論文に、『サルトルとマルクス』(全2巻、春風社、2010−2011年)、「アタック・フランスとフランス緑の党の政策提案」(長砂・荒木・聴濤・岩田・大西・北見『ポスト資本主義を構想する』本の泉社、2014年)、 « Sartre et Merleau-Ponty : l’Autre entre le Visible et l’Invisible --- Démocratie et construction d’une Raison » (Les Temps Modernes, Gallimard, no.572, 1994)など。

藤本一勇(Kazuisa Fujimoto)
早稲田大学文学学術院教授。専門は哲学、表象・メディア論。1966年生まれ。パリ社会科学高等研究院DEA。著書に『情報のマテリアリズム』(NTT出版)、『外国語学』(岩波書店)、『批判感覚の再生』(白澤社)、訳書に、デリダ『プシュケーI』、デリダ『アデュー』、デリダ/ハーバーマス『テロルの時代と哲学の使命』(以上、岩波書店)、デリダ『散種』(共訳)、デリダ『哲学の余白』(以上、法政大学出版局)、ラクー=ラバルト『歴史の詩学』(藤原書店)、フランク・パブロフ『茶色の朝』(大月書店)など。

澤田直(Nao Sawada)
立教大学文学部教授。専門はフランス現代思想、フランス語圏文学。1959年生まれ。パリ第1大学哲学科博士課程修了(哲学博士)。著書に『〈呼びかけ〉の経験 サルトルのモラル論』(人文書院)、『新・サルトル講義』(平凡社)、『ジャン=リュック・ナンシー 分有のためのエチュード』(白水社)、訳書に、ジャン=ポール・サルトル『言葉』『真理と実存』(以上、人文書院)、『自由への道』(共訳、岩波文庫)、フェルナンド・ペソア『ペソア詩集』(思潮社)『新編 不穏の書、断章』(平凡社)、フィリップ・フォレスト『さりながら』(白水社)『荒木経惟 つひのはてに』『夢、ゆきかひて』(以上、共訳、白水社)など。

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